2022.11.16
世界を目指す起業家のTry Firstな事業づくり。コミュニティ購買に発展するサービス成長を目指す。
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起業家×投資家 本音対談 Growing Startups vol.3
カウシェ 代表取締役CEO 門奈剣平 氏 × デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー 南場智子
友人や家族、またはSNS上の誰かと同じ商品をそれぞれ買うことで、お得な価格で商品の購入ができる、シェア買いサービス「カウシェ」。起業家の情熱や事業成長にかける想いを投資家とともに振り返る「Growing Startups」第3弾は、そんな新しい買い物体験を提供する株式会社カウシェ 代表取締役CEO 門奈剣平氏と、挑戦者を応援し続ける南場智子の対談です。
出会いから投資決定まで、わずか3日!
南場:「カウシェ」が手がけるシェア買いというサービスについては、かねてから、中国の「拼多多(ピンドゥオドゥオ/共同購入できるECプラットフォーム)」に注目していたんです。そんな折、DeNAのエンジニアだった池松恭平がカウシェに参画することになって、決め手を聞いたら、「ぶっ刺さった!!」って(笑)。
優秀なエンジニアとして、いろいろなところから誘いを受けた彼がそれほどまでカウシェにのめりこんだ理由は、プロジェクトであり、事業モデルであり、チームだったのでしょうね。いずれにしろ、優秀な人材を惹きつける、素晴らしい会社だと眩しく思ったのを覚えています。
門奈:僕らにご出資いただく前に、そんなストーリーがあったとは。その後、お会いしてからシリーズAのタイミングでリードインベスターとして投資していただくまで、あっという間でしたよね。僕と永原さん(デライト・ベンチャーズ プリンシパル)の初面談が昨年6月、その数日後にマネージングパートナーと面談をして、スピーディに投資決定。あまりの早さに、この先にまだプロセスがあるのかと思ったほどです。
南場:私の信じる仲間たちが選んだ人ですから。「これは間違いない!」っていう確信めいたものがあったかな。それも出会いね。当時、ほかに似たモデルの事業もたくさん立ち上がってはいたけれど、それは悪いことではなく、市場が作られつつあるサイン、「あ、来るな」っていうサインだと捉えていました。
門奈:すばやい意思決定には、すごく勇気をいただきました。事業を作る側としては、とても励まされることなんです。そして、僕たちの事業に共感してくれているからこそ、これから一緒に長く走っていけるんだろうなあとも。
南場:さすがにそこまで早い意思決定は稀ですけどね(笑)。門奈さんの第一印象は、とても柔軟で、斜に構えたものの見方をせず、みんなを魅了する愛されキャラ。あまのじゃくな私と違って、どんなこともまず肯定して吸収するのがいいなあと思いました。とはいえ、「買い物」と「コミュニティ」は、簡単に交わらないだろうから、事業の道のりは想像以上に大変でしょうね。
門奈:ええもう、まさに、銃弾がずっと飛び交っている戦場を走り抜けているような感じです(笑)。
「新しい購買体験」を築くカウシェに賭けてみたい
門奈:これまでのECは、「早い」「すぐ届く」という特徴はあるけれど、一方では物資調達に近い購買体験、つまり、倉庫からモノを引き出すような側面がありました。でも、本来、お店に並んで買ったときの情熱とか、魅力的なモノを見つけて衝動買いしたときのワクワク感など、ショッピングにはいろんな感情があるもの。そんな気持ちを共有できる、人と人との関係性を大切にしたプロダクトを創りたいと思っています。
南場:目先の数字を上げていくことよりも、そんなふうにまずは「新しい購買体験」を築こうとしているカウシェに賭けてみたいと、私は思ったんです。実際、カウシェのユーザーの何割ぐらいの人が、門奈さんが理想とするような買い物をしていますか?
門奈:大半の方が、「これを買う」と決めてカウシェに来るのではなく、「誰かと一緒にお得に買いものをする場所」ということを理解し、ペアで抽選を楽しんだり、誰かを招待したりしています。カウシェというコミュニケーションの場を通じて、人々が買い物を楽しんでくれると嬉しいし、そこが僕らの存在する意義だと実感しています。
南場:コミュニティが生まれて、活性化していく……、まさに、DeNAが携帯オークションサイト「モバオク」を立ち上げたときが、そんな雰囲気でした。「モバオク」では、出品者と落札者との間で、それまでのPC版オークションサイト「ビッダーズ」より、はるかに活発なコミュニケーションが生まれたんです。オークション=物の値段を競り上げたり、単に物を手に入れたりする場所なのかと思いきや、コミュニケーションもちゃんと行われていたんですよ。
さらに、その後にリリースした携帯向けゲームサイト「モバゲータウン」に「モバオク」のコアファンをご招待したところ、あっという間にコミュニティが広がり、活性化しました。
門奈:今はますます情報交換がスムーズにできる環境が整ったし、実際にユーザーもネット上でのコミュニケーションに親しんでいます。今後は、「購買」と、それを誰かと一緒に楽しむという「エンタメ」を掛け合わせたサービスを、さらに成長させていきたいです。
「頂(いただき)」を大切にして、成長していきたい
南場:門奈さんは愛されキャラで素直だけど、事業に関しては頑固なのが素晴らしいですよね。会社が成長していくなかで、いろんな方のアドバイスがあると思います。それらをどうやって受けとめるかも悩みどころだろうなと。
門奈:「素直だけど頑固」、メモしました(笑)。僕の十年来の上司であり戦友の篠塚孝哉さん(現カウシェ社外取締役)には、「アドバイスをめっちゃスルーしてるよね」と苦笑されます。たとえば、会社のロゴマークはワントーンを勧められたのに、こんなにカラフルなものにしてしまった。
南場:へえ、アドバイスを聞いたときは、どんなふうに思ったのかしら?
門奈:「一理あるな」と思いました。その上で、自分たちが表現しようとしている世界を考え、買い物というツールを突破していくのなら、カラフルな色を使うのがベストだという答えにたどり着いたんです。
南場:「それも一理ある」と受けとめたうえで違う意思決定をするって、大事なことですよね。とはいえ、ときには、誰かが心砕いてアドバイスしてくれたことがプレッシャーになることもない? 私自身、創業当時に大いにそれを感じたことがあって……。
「この人にはとてもお世話になった」「あの人にも、この人にも」と、片方の面目を保とうとすればもう片方の面目が保てないことが辛かった。今振り返れば、この気遣いは、経営者として意思決定を行ううえでは危険なことでもあったなと感じます。
門奈:あります、あります。そして僕も同じく、意思決定を行う際に、流されてしまっていないか、不安になることがあります。
南場:そんなとき、流されないためにも、めざす「頂」がすごく大事なんだよね。アドバイスをする側は、「頂」のために断られたのなら、ネガティブには思わない、むしろリスペクトするはず。門奈さんは、「頂」をどういうふうに定義していますか?
門奈:目指しているのは、コミュニティ購買のマーケットプレイス。そして、頂は「世界一楽しいショッピング体験をつくる」。この「頂」をときに揺さぶるのが、投資契約の内容ですよね。起業家は投資家に対して強い責任があるし、本気の事業報告をしようと思っているけれど、あまりにも縛られすぎると、「頂」がぶれてしまう。
その点、デライト・ベンチャーズは過度に契約で縛ることなく、むしろ起業家が大胆なチャレンジをできるよう、投資契約などについてもアドバイスをしてくれるのが心強かったです。
南場:日本にはまだまだ、個人保証など、起業家にリスクを負わせすぎる契約が慣習として残っていますからね。デライト・ベンチャーズはそうではなく、起業家が失敗をおそれず大きな挑戦に踏み出せるようサポートしたいと思ってるんです。パイを「取り合う」のではなくパイの全体を「大きくする」発想を持ち、縛りすぎない方がいい。
同時に、起業家の時間も大切にしたい。それは、私自身が創業時、社交(味方作り)にかなりの時間を使ってしまったと反省しているからなんです。門奈さんには、「頂」をめざして、事業とユーザーに向き合った時間の使い方をしてほしいです。
トライ&エラー、まずは失敗を恐れずやってみよう!
門奈:いま、デライト・ベンチャーズが伴走してくれているからこそ、Try Firstな姿勢で事業づくりを進めています。僕らはどの施策がイノベーションにつながるかはまだわからないけれど、トライの回数を増やすことは、意志をもってできる。思いもよらないところで次の世界が開かれているかもしれないから、まずはやってみようと、自分自身に対して失敗を推奨する姿勢でいようと。
南場:それは運をつかむ重要なポイントなんだよね。立派だなあ。なにより、日本と中国、両方の文化を持っている門奈さんはバックグラウンドもグローバルで羨ましいです。それは選びたくてもなかなか選べない環境だもの。
門奈:多感な思春期は、日本でも中国でも少数派として扱われることを辛く感じたこともあったけれど、今はそれが逆に強みだと思っています。Eコマースが進んでいる中国でのインタビューもハードルなく行えますし。
南場:羨ましい!
門奈:親には感謝していますよ。そうそう、カウシェは創業初期、うちの親が営むレストランのバックヤードが仕事場だったんですよ。当時の写真を見ると、カウシェの社員と母親が一緒に食事をしているものもあります(笑)。
南場:そんな門奈さんだからこそ、私はグローバルに出ていくことにも期待しています。DeNAが上場後に海外で展開して苦労した体験を踏まえると、チャレンジするなら早いほうがいいと思います。上場後は株主に対する利益還元を意識し、赤字や株価の低迷を避けるという意味で、チャレンジしづらくなるかもしれないから。
もちろん、必ずしもグローバルに出ていくことが良いとはかぎらないし、海外投資家の中には、「まずは日本で勝とう」という人もいます。それこそ、自分の肚に問うのが大切だよね。
門奈:肚は決まってるんです。もともと、いずれは世界へ出ていきたいという思いでスタートしているし、僕のようなバックグラウンドを持つ人間が出ていかなければいけないとも思っています。今すぐにでも行きたいぐらいです。
南場:そのためにも、優秀な人材が必要なわけだけど、カウシェはもうすでに集まっていますね。
門奈:はい、うちにはライジングスターがたくさんいます。彼らとともに、僕たちのバリューである「Enjoy Working / 仕事を楽しむ姿勢を常に持とう」を体現できる組織にしていきたいです。修羅場を楽しめるチームでありたいし、仕事を人生の一部としても楽しめるチームでありたいですね。
南場:デライト・ベンチャーズは、持っているリソースをすべて投じて応援しますよ!やっぱり、世界でも勝ってほしいな。
門奈:「頂」を忘れず、大きく成長しながら、コミュニティ購買に発展するサービスを目指します。もちろん、世界へのチャレンジも!
南場:やってほしい!楽しいし。突き進んでみたら意外と落とし穴があるかもしれないけれど、もがいているプロセスそのものが尊いから。私自身が高い目標に向かってストレッチしまくるのが一番楽しいからそう思うのかな……。でも、生きている実感は、遊園地の楽しさじゃなくて、必死になってもがいているときも含めての楽しさだと思うから。 カウシェも、大いにもがいてほしい。応援してます!
Profile:
●株式会社カウシェ 代表取締役CEO 門奈剣平 氏
1991年生、中国・上海生まれ。2007年まで上海で育ち、15歳で日本へ。2012年、ホテル・旅館の宿泊予約サイトを運営するOTA「Loco Partners」に2人目のメンバーとして入社。シード前からM&A後のPMIまでを経験する。2020年4月、「カウシェ」を創業。「買う」と「シェア」を融合した共同購入アプリ「カウシェ」を運営する。
株式会社カウシェ:https://kauche.com/
●株式会社デライト・ベンチャーズ マネージングパートナー 南場智子
1986年 マッキンゼー入社。1999年 株式会社ディー・エヌ・エー創業、2019年 デライト・ベンチャーズ創業。