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コラム

2021.5.17

起業家・新規事業創出のためのVenture Builder

Ryo Bando
坂東 龍Ryo Bando
Managing Partner
起業家・新規事業創出のためのVenture Builder

デライト・ベンチャーズの坂東 龍です。私はデライト・ベンチャーズの中で、Venture Builder/ベンチャー・ビルダー事業(以下VB)という、日本のベンチャー・キャピタルにおいてはあまり例を見ない、起業家輩出・新規事業創出を目的とした仕組みを担当しております。

今回は、このVBという仕組みはどのようなものか?国内外での展開は?そして、なぜデライト・ベンチャーズにおいて通常の投資と共にVB事業を実施しているのかなどを紹介できればと思います。

自己紹介

まず簡単に私の職務経歴を紹介させてください。新卒で生命保険会社に入社し3年間勤務後、2003年にDeNAに転職しました。インターネット広告営業や事業立ち上げコンサルタントを経験したのち、2007年から社長室(のちに新規事業推進室)に異動し「みんなのウェディング」を事業責任者として立ち上げスピンアウトするまでの3年間事業をリードしました(その後2014年に東証マザーズ上場)。ゼロから立ち上げてチーム一丸で悪戦苦闘しながらも多くの方々に利用いただけるサービスに成長させることができた経験は私にとって大きな財産となり、現在のVBでの仕事にも大いに役に立っています。その後、ソーシャルゲームの企画部長や決済代行子会社ペイジェントの取締役、DeNAのサービスインキュベーション事業部長、SHOWROOMの取締役などを経て、2019年6月にデライト・ベンチャーズにVB事業の責任者として参画し、現在に至ります。

16年間のDeNA生活を振り返ると、その半分以上の時間を新規事業の創出・育成・マネジメントに捧げてきました。ゼロから新規事業を創ることが大好きですし、ユーザーに大きなデライトを届けることができた時にチームで味わう喜びは格別です。これからもVBを通じて、多くの起業家・起業家候補の方々と共にどんどん新しい事業を世に送り出したいと思っております。

ベンチャー・ビルダー(VB)とは

ベンチャー・ビルダー(別名スタートアップ・スタジオ、以下VB)は、近年世界で展開されている起業家輩出の仕組みです。「新規事業と起業家をどんどん創り出す工場」と言うとイメージが沸くかもしれません。全世界の50以上ものベンチャー・ビルダーの調査を行い、著書に"STARTUP STUDIO"があるアッティラ・シゲティはこの仕組みのことを以下のように記しています。

「スタートアップスタジオ(ベンチャー・ビルダー)」とは、起業や新規事業創出のリスクを下げる新しいプラットフォームである。
(中略)
ベンチャーキャピタル、アクセラレーター、インキュベーターなどと異なるのは、スタジオ自身が多種多様なスキルを持つプロフェッショナルを抱え、彼らがアントレプレナーやエンジニア、大企業の新規事業担当者らと一緒に革新的な新事業を「連続して」「同時多発的に」開発・育成・輩出している点だ。つまりこれは、新製品開発やスタートアップの立ち上げで必要になる「知恵と汗」を提供し続ける、全く新しい"起業支援プラットフォーム"なのである。

つまり、新規事業を開発するプロフェッショナルを多く揃えることで、事業創出の段階で起業家が独りで暗中模索するのではなく、新規事業立ち上げに精通したメンバーのサポートを受けながら、より早く効率的に新規事業を立ち上げ「起業」することを可能にする仕組みなのです。例えば、ビジネス開発の経験のみでプロダクト開発したことがない起業家がVB内の経験豊かなエンジニアやクリエイターとチームを組み初期プロダクトを作り上げていく、といったイメージです。このような起業チーム・新規事業を同時多発・連続して創り出していくのがVBなのです。

ベンチャー・ビルダー(VB)の支援内容

  1. 「事業化」の支援:実現しようとしている事業アイデアに対しての客観的な市場調査や顧客調査、プロトタイプ・MVPを活用した本開発前の仮説検証
  2. 「ヒト」の支援:上記例のエンジニアやプロダクトのデザイナー、マーケティングなど、0→1を形作るためのプロフェッショナルリソース提供
  3. 「資金調達」:スタジオ自体が投資家として出資、または連携しているエンジェルや投資家からの出資を募り、早期のスピンオフを支援

の3点がVBの主たる支援内容で、これによって起業の志をもつ人がスムーズに起業を実現することが可能となります。

事業化支援については、起業家が事業アイデアを持っていなくても、VBが自ら様々な市場やサービス領域の調査を通じて膨大な事業案をストックしており、その事業案と起業家候補をマッチングすることで事業立ち上げされるケースもあります。

EIR(Entrepreneur in Residence/客員起業家制度)

これまで日本において起業家が新規事業を立ち上げるパターンとしては、自ら独立起業するか、企業内部で新規事業部門にアサインされるかのどちらかのパターンしかなかったのではないでしょうか。しかし近年、企業に所属し給与を得ながら起業の準備できるEIR(Entrepreneur in Residence/客員起業家制度)という制度が活用され始めています。

この制度とVBは相性が良く、優秀な起業家候補者がVBに一定期間所属し、VBの様々な支援を受けながら新規事業の立ち上げを行い、VBから出資を受けてスピンアウトするというパターンが今後増えていくと思われます。

デライト・ベンチャーズにおいても、DeNA社員のみならずDeNA社外の方の起業も支援させていただいており、ファンド立ち上げ初期からEIRとして優秀で熱意のある起業候補の方々に参画いただいております。

VBのビジネスモデル

VBのビジネスモデルは、起業家と共に事業を立ち上げて、出資も行い、そのスタートアップの株式を保有し、そのスタートアップが将来的にExitした際にファイナンシャルリターンを得るというパターンが多いのではないでしょうか。

これはベンチャー・キャピタル(VC)と同様のビジネスモデルはありますが、VCのように資金提供やアドバイスをすることだけではなく、ゼロから起業家とチームを組んで共に事業立ち上げを行うので、投資家というよりは共同創業者的な立ち位置の方が近いのではないでしょうか。そのため、VB発のスタートアップはシード期において一般的なVCよりもVBの方が株式保有比率が高い傾向があると思います。

ベンチャー・ビルダー企業例

前述した"STARTUP STUDIO"には、InnoHub Mexico、Idealab、Betaworks他のベンチャー・ビルダーの名前が上がってきますが、今回はVC機能も持ち合わせている米国のベンチャー・ビルダーを2つ例に挙げさせていただきます。

Science Inc. (サイエンス)


サイエンスはベンチャー・ビルダーとアーリーステージの投資を両輪で実施しています。VB機能は「モバイル、マーケットプレイス、EC」に注力し、広大なロサンゼルス本社で14名、またビジネスにおけるあらゆるヒトのサポートはバンガロールにいる100名のチームで行い、起業の初期段階のハンズオンサポートを実施します。また、投資機能としては、上記の注力領域に加え、レガシーブランドのリブランディングなどをテーマにあげ、ロサンゼルスより5名のインベスターが出資活動をしています。

High Alpha(ハイアルファ)


ハイアルファはB2B SaaSに特化した会社です。VBとVCとしての投資機能だけではなく、大企業の新規事業のスピンオフのサポートも第3の柱に加え、社内起業家をうむサポートをしていきます。

日本の事例

海外ほどの実績を上げるに至ってはないようですが、日本のスタートアップエコシステムにおいても近年「スタートアップスタジオ」や「ベンチャー・ビルダー」企業や組織がいくつか出現しており、今後の発展が期待されています。

などが例として挙げられます。

それぞれ、バックボーンとなる企業、支援する対象者(起業家・企業)、対象事業領域、VC機能の有無でそれぞれ特徴があるようです。続いて、デライト・ベンチャーズのVBについてご紹介させていただきます。

なぜデライト・ベンチャーズでVBをやっているのか

我々デライト・ベンチャーズがVBを立ち上げた背景・経緯についてですが、我々は日本が起業のハードルがとても高いことに問題意識を持っており、日本の成長のためには「起業が当たり前」になることが必要であると強く思っています。

かつては、DeNAにおいても新規事業創出は社内で育むことを前提として取り組んできました。しかし、上記のように日本の起業問題という視野に立つと違うアプローチが見えてきました。優秀な社員を社内に閉じ込めておくのではなく、「ざくろの実をひっくり返すように中の宝石のような粒、事業や人材を表出させれば、表面積は増え、事業もおおらかに発展するでしょう(南場)」と。このような思考の変化があり、これからは起業したい人をどんどん起業させ、さらには優秀だけど起業に踏み出せていない人にも起業するようにそそのかせようという思いでVBを立ち上げるに至りました。これはDeNAの社員だけでなく、他社の優秀な起業家潜在層も対象としております。

実際にデライト・ベンチャーズがどのような運営方針を持っているか、具体的に何をしているかは次回の記事で共有できればと思います。

この話を読んで何かしら心に引っ掛かりがあった方、一緒に新規事業立ち上げにチャレンジしてみたい方は、ぜひ一度デライト・ベンチャーズにお問い合わせください!

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